Google App Engine(Python)でKay-Frameworkを使い、メールを受信する方法を紹介します。
※Kayのメール受信用ハンドラークラスを使用した方法を掲載しました。
改訂版 Google App Engine(Python)でKay-Frameworkを使い、メールを受信する
Kay-Frameworkの導入
mercurialを使用して、Kayの最新版を取得します。
hg clone https://kay-framework.googlecode.com/hg/ kay
プロジェクトを作成します。
ここではアプリケーションIDを「myproject」としています。
python kay/manage.py startproject myproject
cd myproject
アプリケーションを作成します。
python manage.py startapp myapp
settings.pyを編集します。
settings.py
INSTALLED_APPS = (
'myapp',
)
APP_MOUNT_POINTS = {
'myapp': '/',
}
アプリケーションを動かし、設定が正しく行われているか確認します。
開発サーバーを起動します。
python manage.py runserver
「http://localhost:8080/」にアクセスし、「Hello」と表示されることを確認します。
GAE にアップロードします。
python manage.py appcfg update
「http://アプリケーションID.appspot.com/」にアクセスして、「Hello」と表示されることを確認します。
※Kayの導入について詳しくはKay チュートリアルをご覧ください。
メールの受信設定
Kay-Frameworkでメールを受信できるように設定します。
app.yamlを編集します。
次の値を追加し、メール受信機能を有効にします。
app.yaml
inbound_services:
- mail
app.yamlのhandlersに次の値を追加し、メールを受信したとき「/_ah/mail/ 」を呼び出すように設定します。
app.yaml
handlers:
- url: /_ah/mail/.+
script: kay/main.py
login: admin
myapp/urls.pyを編集し、「/_ah/mail/ 」へのリクエストに対して行う処理を設定します。
myapp/urls.py
view_groups = [
ViewGroup(
Rule('/', endpoint='index', view='myapp.views.index'),
#追加
Rule('/_ah/mail/<mailaddress>', endpoint='receiving_email', view='myapp.views.receiving_email')
)
]
以上で、メールを受信すると、myapp.views.receiving_emailが呼び出されるようになりました。
認証機能
開発環境でメールの受信テストを行うためには、管理者権限が必要です。
そこで、Kay-Frameworkの認証機能を有効にします。
settings.py
INSTALLED_APPS = (
'kay.auth', #追加
'myapp',
)
MIDDLEWARE_CLASSES = (
'kay.sessions.middleware.SessionMiddleware', #追加
'kay.auth.middleware.AuthenticationMiddleware', #追加
)
「http://localhost:8080/」にアクセスしたときに、ログインフォームを表示するようにします。
admin_requiredデコレータでindexを修飾します。
myapp/views.py
from kay.auth.decorators import admin_required
@admin_required
def index(request):
return render_to_response('myapp/index.html', {'message': 'Hello'})
「http://localhost:8080/」にアクセスして、ログインフォームが表示されることを確認します。
メールの受信処理
メールを受信したときに呼ばれる関数を作成します。
myapp/views.py
import logging
from werkzeug import Response
def receiving_email(request, mailaddress):
'''メール受信処理
@param request リクエスト
@param mailaddress メールを受け取ったメールアドレス
'''
logging.debug('receiving_email')
#何を返せばいいのかわからないので適当に。
return Response('ok')
開発環境でメールの受信処理を呼び出してみましょう。
開発サーバーを起動します。
python manage.py runserver
「http://localhost:8080/_ah/admin/inboundmail」にアクセスして、メールを送ってみます。
receiving_email関数が呼ばれ、ログに「receiving_email」と出力されます。
次のようなエラーメッセージが表示された場合、管理者権限でログインしていないことが原因です。
「http://localhost:8080/」にアクセスして、「Sign in as Administrator」をチェックしてログインしてください。
Message send failure
Current logged in user is not authorized to view this page
メールの解析
受信したメールを解析します。
今回は、App Engineが用意しているInboundEmailMessageクラスを使用します。
myapp/views.py
from google.appengine.api import mail
message = mail.InboundEmailMessage(request.data)
メールアドレスの解析
メールアドレスを解析する関数を作成します。
myapp/views.py
from email.Utils import parseaddr, getaddresses
from email.Header import decode_header
def _parseaddress(message, field):
'''sender,to,ccから名前とメールアドレスを取得するジェネレータ
@param message メールのメッセージオブジェクト
@field フィールとを表す文字列(sender,to,cc)
@return (名前,メールアドレス)のtuple
'''
if hasattr(message, field):
for (name, addr) in getaddresses([getattr(message, field)]):
if name: #名前があればデコードする
(name, charset) = decode_header(name)[0]
name = name.decode(charset)
yield (name, addr)
メールのFrom,To,Ccには複数のメールアドレスが登録されている場合があります。
この関数では、(名前,メールアドレス)のtupleをメールアドレスの数だけ返します。
このままでは使いにくいので、解析結果を文字列に変換する関数を作成します。
myapp/views.py
def _join_address(gen):
'''_parseaddress関数で解析したメールアドレスを整形します。
@param gen _parseaddress
@return 名前<メールアドレス> の形に整形した文字列
'''
return u' '.join([u'%s<%s>' % addr for addr in gen])
これでメールアドレスを取得できるようになりました。
次のようにして取得することができます。
message = mail.InboundEmailMessage(request.data)
#送信者
sender = _join_address(_parseaddress(message, 'sender'))
#宛先
to = _join_address(_parseaddress(message, 'to'))
#CC
cc = _join_address(_parseaddress(message, 'cc'))
_parseaddress関数と_join_address関数は、一つにまとめてもいいでしょう。
メールの件名の解析
メールの件名は、そのままではエンコードされていて読めません。
件名を解析する関数を作成します。
myapp/views.py
from email.Header import decode_header
def _parsesubject(message):
'''デコードしたメールの件名を取得する
@param message メールのメッセージオブジェクト
@return デコードしたメールの件名
'''
if not hasattr(message, 'subject'): return u''
(subject, charset) = decode_header(message.subject)[0]
if not charset: charset = 'utf-8'
return subject.decode(charset)
この関数を使用することで、メールの件名を取得できます。
message = mail.InboundEmailMessage(request.data)
#件名
subject = _parsesubject(message)
メールの日付の解析
メールの日付はRFC 2822形式の文字列になっています。
このままでは扱いにくいですので、datetimeオブジェクトに変換する関数を作成します。
myapp/views.py
import datetime
from email.Utils import parsedate
def _parsedate(date):
'''日付を解析してdatetimeオブジェクトを返す
@param date RFC 2822形式の日付を表す文字列
@return datetimeオブジェクト
'''
return datetime.datetime(*parsedate(date)[0:6])
次のようにして、メールの日付を表すdatetimeオブジェクトを取得できます。
message = mail.InboundEmailMessage(request.data)
#日付
date = _parsedate(message.date)
メールの本文を取得する
メールの最初のテキストパートを取得する関数を作成します。
myapp/views.py
def _parsebody(message):
'''メールの最初のテキストパートを取得する
'''
content_type, payload = message.bodies(content_type='text/plain').next()
return payload.decode()
次のようにしてメールの本文を取得することができます。
message = mail.InboundEmailMessage(request.data)
#本文
body = _parsebody(message)
HTMLメールが送られてきたときの対応は、今回は省略します。
メールの内容をデータストアに保存する
メールの内容をデータストアに保存するためのモデルを作成します。
myapp/models.py
from google.appengine.ext import db
class Email(db.Model):
sender = db.StringProperty()
to = db.StringProperty()
cc = db.StringProperty()
subject = db.StringProperty()
date = db.DateTimeProperty()
body = db.TextProperty()
受信したメールを解析して、データストアに保存する処理は次のようになります。
myapp/views.py
from google.appengine.api import mail
from werkzeug import Response
from myapp import models
def receiving_email(request, mailaddress):
'''メール受信処理
@param request リクエスト
@param mailaddress メールを受け取ったメールアドレス
'''
message = mail.InboundEmailMessage(request.data)
#送信者
sender = _join_address(_parseaddress(message, 'sender'))
#宛先
to = _join_address(_parseaddress(message, 'to'))
#CC
cc = _join_address(_parseaddress(message, 'cc'))
#件名
subject = _parsesubject(message)
#日付
date = _parsedate(message.date)
#本文
body = _parsebody(message)
models.Email(sender=sender,
to=to,
cc=cc,
subject=subject,
date=date,
body=body,
).put()
#何を返せばいいのかわからないので適当に。
return Response('ok')
開発サーバーで動作確認
開発環境でメールの受信処理を呼び出してみましょう。
開発サーバーを起動します。
python manage.py runserver
「http://localhost:8080/_ah/admin/inboundmail」にアクセスして、メールを送ってみます。
メールを送信できたら、「http://localhost:8080/_ah/admin/datastore」にアクセスして、送信したメールの内容がデータストアに登録されているか確認します。
GAEで動作確認
GAE にアップロードします。
python manage.py appcfg update
それでは、メールを送信してみましょう。
メールアドレスは
適当な文字列@アプリケーションID.appspotmail.com
となります。
メールアドレスが見つからない旨のエラーメールがかえってきた場合は、メール受信機能が有効になっていません。
app.yamlの設定を確認してください。
送信したメールの内容がデータストアに登録されているか確認します。
最後に
メールを解析する関数は、google.appengine.api.mail.InboundEmailMessageのサブクラスを作り、そこに実装してもいいかもしれません。
今回は単純なテキストメールのみを扱い、HTMLメールや添付ファイル、携帯電話のメールの対応などは、扱いませんでした。
リクエストがあれば、続編を書くかもしれません。
以上で、App Engineでメールを受信する方法の説明を終わります。
不具合がありましたら、お知らせいただけると喜びます。
関連ページ
追記
「Kay でメールを受信する」に、Kay にはメール受信用のハンドラークラスが用意されていることが記載されていました。
そのうちメール受信用のハンドラークラスを使った方法に修正したいと思います。
さらに追記
Kayのメール受信用ハンドラークラスを使用した方法を掲載しました。
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handlers:
– url: /_ah/mail/.+
script: kay/main.py
login: admin
は以下に変更しなければなりません。
handlers:
– url: /_ah/mail/.+
script: kay.main.application
login: admin